Writer:Oumi

過去録

フリーゲームの展開について 前

本題の前に、前々回の疑似家族の話。もっと直近の例で何か上げようと思ってたけどど忘れして「何だったかなー」と考えていたのですが、思い出した。「輪るピングドラム」だ。あれも疑似家族の解体に伴う子ども役の自立で話が収束しましたね。

さて本題。
近頃うだうだと思いを巡らせていた「フリーゲームの展開について」をまとめておこうと。
知っている方はお察しの通り、「ゆめにっき」が各種展開を始めて、フリーゲームというものの進出について各所で触れられているので、触発された形です。
自分には全く関係のない話だから、外野からの繰り言に過ぎませんが。
ちなみに「ゆめにっき」にすごい思い入れがある訳でもないので、賛否の話でもないです。
あと、話すことは全部憶測と邪推に過ぎないことも予め表明しておきます。

まず「フリーゲームが目をつけられた」と不安がっている声を良く拾うのですが、それは誤解でしょう。
ぶっちゃけた話、あれは「ニコニコの人気コンテンツ商売」の延長にすぎない訳で。ボカロでそれなりにペイしたので、じゃあ次はその辺り手を出すか、程度のことにしか見えない、やり方からして。「ゲーム」としてのコンテンツの価値は念頭にないと思われます。
まあ、だから反発する気持ちは分かるのですよね。「手堅いコンテンツで予算をかけずにかっちり小規模成功」みたいな冒険のなさ。「これをぜひ売り出したい。広めたい」という熱意がまるで感じられない。
そっち系のノウハウがないのは分かるけど、まず本体の「ゲームそのもの」を露出させるのが先じゃないか。という気持ち。

他によく見かけた声として「元がフリーゲームのものにお金を払うなんて」みたいなものがありますが、これを有料無料論争に落とし込むと本質を見失うなとも感じました。
その根本には多分「他のコミュニティにかっさらわれ、自分たちの意図しない変化を遂げる」という危機感があるんじゃないかな。メディア展開の際に良くある構図ですが。
で、興味深いのは、既に「ゆめにっき」はニコニコという場にかっさらわれている、という事実だったり。2004年のリリース以来、2chスレ(当時は継続して語れるコミュニティはここしかなかった)が見守っていた訳で、そんなスレ住民らにとってみればこの流れは更なる蹂躙だよなあ、と。そこがニコニコが流行の起点となった「青鬼」や「ib」とは違う厄介な点ではあります。
正直なところ「フリーゲームなのに……」と言っている人のどれだけが「ゲームとして」体験してるんだろうな、と複雑な感慨を抱くのを否めない。
個人的には動画として楽しんでもらうのは全然構わないのですが、やっぱりそれは別の体験だよ、とも思う。
話がずれてきましたが、まあともかくニコニコで膨らまされた以上、この流れはある種の必然なんだろうなとも。

あとは散々言われているけど「ゆめにっき」というゲームの特性が拍車をかけていますよね。
これがイメージCD化、ぐらいだったらここまでの反発は受けなかっただろう。

さて、ここまでが前提で「この騒動で見えてきたフリーゲームの展開というものの先の見えなさ」の話をしたいと思ってます。
が、既に長すぎるので続きは次回。

2013年3月3日(日)

フリーゲームの展開について 後

さて続き。
で、結局のところ、フリーゲームの展開においてあまり幸福な事例が見受けられないのは、「展開のための道筋ができていない」ことにあるんだろうなと。
何しろ、本質としては「ゲーム」な訳ですよ。それをまず出さずして何を出す、しかしゲーム作成には多人数の手が入ることになり、そうすることによって「フリーゲーム」の良さというものがスポイルされがちになってしまう。
元々プラットフォームがあまりに多いのも問題。小説や漫画の場合は本屋に行けば入手できるという、驚くほど単純な誰もが知っている仕様ですから。

例えば、たぶん今一番うまいことファンとWinWin関係を作っているのは「ニンジャスレイヤー」なんでしょうけど。あれはほんやくチームが元から進出の意図を隠さずに、段階を見据えて情報コントロールしてるんですよね。実際、ドラマCDの発売が決まって順調に事を進めている。映像化までそのうち行くでしょうね。
前述した通り「小説」という手法も強い。賞を取ろうが持ち込もうがネットから拾われようが、書店に並べばその後の展開の仕方は変わらないので。ファンもマイルストーンが見えて覚悟はできているし、どうやって応援すれば効果的でありリターンがあるのか承知している。
もちろん、派生物が必ずファンの意に沿うものかどうか、というのは難しいし、実際に不満を持つ層は出てきてしまうだろうけれど、それでも「そうやって還元すれば本編の続きがもっと読める」という餌はかなり強力です。
何よりもその本質部分でリターンが来る、っていう確約は強い。

翻って、ノベル化計画を見れば、お解りの通り。
あれはファンの応援に対してのリターンがあるのかどうか分からない代物であり、それが反発の大きな原因でしょうね。
何というか、応援の声は虚空に消えていくだけだろうな……と感じさせてしまっている。

ゲームだって、入力に対しての出力があるからこそ楽しい訳で。
ファンにマイルストーンを示すってのはすごく大切なことだと思います。
とはいえ、作者も分からない訳です。行く手がどうなっているのか。
それがフリーゲームの展開の不幸だな、と考えたのです。

たぶん終わり。

2013年3月5日(火)

第三世界のながいけん

ながいけんの新作コミックスが発売されていることを遅まきながら知り、さっそく手に入れた。「第三世界の長井」。一・二巻同時発売である。正直なところ、連載をしていることも知らなかったし、復活版のモテモテ王国はどうにも乗れない代物だったので、そこまで期待せずに読むことにした。
早速かっ飛ばしてるなあ、何だこれはと、とりあえずながい節を楽しみつつ読み進んでいったのだけど、だんだんと心の片隅が真顔になっていく。一巻から二巻にさしかかる頃になってくると、うすうす感じはじめていた。
これ、ものすごく高度なことをやろうとしているんじゃないか、と。そしてそれは今のところ成功しているんじゃないかと。
そして二巻を読み終わり、ある程度の世界の構造が見えた今、心から言う。
これ面白い。すごく面白い。何だこれすごい。
そして同時に、この面白さすごさを共有できる人は少ないんじゃないかと思い、何とか数人には伝えられないかと思ってこれ書いてます。
いきなりこれ読まされたら、意味不明の妄言を繰り返す落書き二名と「……何だこれ。何なんだこれ」とひたすら困惑する語り手の独白が延々と一巻分続くという悪夢のような代物を前に、「……これのどこを面白がればいいのか分からん。いや、そもそも何が書いてあるのかすら分からん」と、ファーザーの作戦内容書を読まされたオンナスキーのごとき感想が出てくること間違いなしな気がするので。

まず、内容をすごく丁寧に説明したレビューがあったので、そちらに参照リンクを。
ながいけん閣下『第三世界の長井』に絶句(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース

それでもって、自分にとってどういう風に解釈したのかを書いてみると、これは「不条理ギャグを世界の視点から見つめ直すとどうなるのか」という物語なんだと思う。無茶苦茶であると同時に、冷徹な計算が透けて見える。
不条理ギャグっていうか、ぶっちゃけモテモテ王国。途中放棄されたモテモテ王国を完結させるための語り直しでもある。とはいっても、モテモテ王国のキャラはたまに背景にちらっと顔を出すだけで、全然話には関わってこない、たぶんこれからも。
モテモテ王国っていうのはいわゆる「奇妙な同居人」のモデルで、同一パターンを繰り返す構造の物語なのだけれど、その端々にちらりと裏の面を覗かせることがあった。すごく詳細な考察ページを作っている人もいてすごい(ファーザーに関しては考えるだけ無駄な部分があるので飛ばしてオンナスキーや知佳さんや大王辺りを読んだ方が雰囲気掴みやすい)。そういう世界が剥がれる瞬間を内包しているところが自分は好きだったけれど、そこに物語上で踏み込む時はこないだろうなとも思っていた。来るとしたら、それは物語が終わる時だ。事実、物語は打ち捨てられて消えていき、仕方がないことだと諦めた。
しかしそちら側からの視点を持って、物語は戻ってきたのである。
世界を放棄し、冒頭から「逃げるなよ」という落書きをもって迎えられ、歪んでいく世界を扱いあぐねる帽子の少年は、作者の自虐的な投影であるというのはやはり答えの一つであると思える。となると、男たちとの会議は脳内会議であり、同じようにアンカーを打つ能力を有する音那は編集者な立ち位置だろうか。いや、「おとな」という呼び方からして、責任放棄しようという「少年」とそれでもどうにか物語を完結させようという「おとな」の部分との対立なのかもしれない。不条理ギャグを創作する思考過程のある程度を開陳した、私漫画的な印象も受ける。
あ、そうはいっても、メタ漫画特有の生臭さはない(作者が出てきて「描けないよー」とか言ったりなんかの)。ちゃんと物語は物語世界の中で完結させてくれるだろうことは信頼している。
とりあえず読み終わって感じたのは、これがもし完結することがあったら傑作になるってこと。
三年で二巻、描けたところまで掲載なんで、完結する可能性は正直高く見積もれない。
しかし雑誌の片隅でこれを続けさせるっていうこと自体、編集部すごいな……。「アンケート? それは宇宙犯罪シンジゲートの名前じゃろか?」みたいな状態だろうに。

それにしても、無差別にはお勧めしにくい。
この文法が通じるのは一部の世代だけなんじゃないかという危惧もあって。どんな世代かというと「二次創作じゃなくてパロディと言っていた世代」。
癖のないうまい絵の中に、いきなり70-80年代のネタ(主にロボットもの)がぽんと投げ込まれるカオス空間だからなー。説明なしで背後にイデゲージが輝いたりする。まあ自分もスパロボとかで一応知ってる、みたいなネタも多いから、ギャグの呼吸が合うかどうかが一番重要なんだろうけど。
そういう文法的なものはモテモテ王国と共通してるので、興味を持った方は是非モテモテ王国からどうぞ。こちらにいきなり挑むチャレンジナブルな方も大歓迎です。

2013年3月7日(木)

いたちに噛まれた話

特に他に書くこともないので、いたちに噛まれた時のことを書きます。
昔もここでちょっと書いたけど、もう少し詳しく書きます。
飼った経験がない限り、あまり噛まれたことある人いないと思うし。

フェレットは噛むか噛まないかというと、基本的に噛む生き物です。
何しろ奴らは自身の要求の表現に乏しいです。
犬猫なら体を擦りつけたり鳴いたりするところですが、フェレットは鳴きません。というか鳴けません。赤ちゃんの一時期を除くと、痛かったり驚いた時の悲鳴「ギャン」、興奮したり嬉しい時に喉を鳴らす「シューシュー」「クック」という、反射的に発するものだけで、意図的にはたぶん鳴けません。
という訳で、表現力に乏しい奴らができることといったら、噛んでくるか、足に捕まって目で訴えてくるか、そのまま足によじ登ってくるぐらいです。
とはいえ、しつけすれば大丈夫です。甘噛み程度になります。ただし、覚えない奴もいます。生き物だから仕方ないね。
さて、噛んだ奴はしつけ済みでした。うちで飼った三本は全部覚える良い子でした。さらにそれは元々ヘタレな性格だったので、遊んでほしい時に足首を噛んでくるぐらいなもんです。
ちなみにフェレットは大抵手首や足首を狙って噛んできます。たぶん同種の首に一番似ているからです。首の部分は猫と一緒で皮がだるーんとしてて痛くないため、喧嘩遊びの時はそこを噛みつき合って戦います。でも人間はだるーんとしてないのでちょっと痛いです。迷惑です。閑話休題。
では何故噛んだかというと。
まずちょっとした事情で実家から預かっていたため、不慣れな環境で奴は概ね不機嫌でした。なのでスーパーのポリ袋を噛んでストレス発散してました。朝の出勤前だったため「はいはい終わり終わり」と取り上げて片付けようとしました。うっかり口の前に指を出したため、何か勢いで牙が指に食い込みました。うん、私が悪い。
ちなみにその後「何か噛んで牙が抜けない」ことに当のいたちがパニックを起こし、ピューイピューイと鳴きだして口を開けてくれないことには困りました。このまま口を開けてくれなかったら、いたちに噛まれたので会社休みます、とか電話しないといけなくて間抜けです。幸い、一分程度見守っていると何とか口が開いたので、傷口を確認すると、指に小さな穴が四つ開いてました。肉食獣め。大して痛くはなかったけれど、血が溢れてきたので流しで洗いましたが、深いので止まる望みはありません。それでも絆創膏二重巻きで止血して、いたちをケージに放り込み、出勤したのでした。めでたしめでたし。
ちなみに退勤後、絆創膏剥がしたらやっぱり血は止まってなかったので、医者に行って全治一ヶ月な案配です。化膿が怖いので、皆さんも動物に噛まれたら医者にいきましょう。
ちなみに当のいたちは留守の間寝たら全てを忘れたようで、普通にごはん食べてました。

何でこんなことを思い出したかというと、またそのいたちが来るからです。
まあもう噛む元気もないだろうけど。
いたちに噛まれた話、おわり。

2013年3月19日(火)

Akiary v.0.51