Writer:Oumi

過去録

どんでん返しに必要なこと

先日、とある叙述トリックで高い評価を得た某作品を読んで、なるほどこれはうまいなと感服したところなのですが、その時改めて思った「(叙述トリック含む)どんでん返しに必要なこと」の話。
まあ、叙述トリックやどんでん返しってものは、創作する人の中ではハシカみたいなもので、誰しも知った後に一度はやりたがるものですが、きちんと嵌るかどうかは難しいところですよね。
意外な展開っていうのは麻薬みたいなもので、それだけ繰り返して引いてりゃいいよ、みたいなことになっちゃった作品もたまに見かけます。海外ドラマとか。
じゃあ「うまい」どんでん返しには何が必要か。
それは「違和感」なんだろうな、と。
読者に違和感を与えつつも、それを決定的な疑いに変えずにどれだけスルーさせるか、というところが肝要なんでしょう。前述の作品はそれがすごくたくさん仕掛けられていたので、ネタばらしで「ああ、あそこも、やっぱりあそこもそうか、なるほど」と楽しめたのです。
下手な作品は「読者を見事騙し通してやろう」と思うのか、違和感を与える描写を避けてしまい、「言われてみればそうかもしれないけど、アンフェアだろ」と反感を買ってしまう。
実例としては「実は舞台は地球ではなく月だった」としたいのなら、妙に高いところまでジャンプできる様子や、窓から青い光が差し込んできた、みたいな比喩と思わせる描写を入れたりするとか。
「男女と思わせてゲイカップルだった」なら、女役への周りからの扱いがどうもずさんであるとか。
そういうのをどれだけ自然に盛り込めるかが勝負どころですよね。
まあ、そこをうまく捌いたとしても「本当にそこにどんでん返しは必要なのか」という根本的問いが投げかけられる訳ですが。
某作品はそこのところもうまくやってました。傑作と言われる訳です。
叙述トリックものは題名言えないのがもどかしいな。妙に長い題名の奴です。それ以上は秘密。

2013年6月8日(土)

キャラの攻略に必要なこと かもかて編

つい先日、思いを巡らせていて何となく気づいたのだけれど、かもかてのキャラENDに至るまでのシナリオ進行で、「主人公が外部要因を解決する」という形のものはほぼないですね。「お互い両想いなのに障害が二人を引き裂く」みたいな奴。あくまで内部の問題を取り除けば(気持ちが釣り合えば)ENDになるようになっている。
外部問題解決なのはルージョンぐらいか。でもあれも本人にどうやって納得させるかという部分が大きい。
今気づいたところからして自覚して作成していなかったのだろうけど、システムとの噛み合わせ的に必然だったか。
主人公の行動の自由は基本的に制限されていますしね。

2013年6月13日(木)

もやもやしている話

近頃、映画の宣伝などで名前を見かけるようになったのをきっかけに、まだ読んでなかった「二流小説家」を読了しました。
そして今、大変もやもやしています。
読んだ方はご存じかと思いますが、クイーンのように露骨にではないにしろ、いわゆる「読者への挑戦」的な文言やおかしなフックが何度か出てくるんですよね。
何となく目星はついていたけど、勝手な思い込みじみたもので、さすがに読み直す気分にはなれなかったので、誰か詳しく検証してないかなと検索してみたのですが、見当たらない。特に今だと映画の宣伝ばかり引っかかって駄目だ。
唯一、読書メーターに自分と同じ結論の方がいらっしゃったので安心したり。
ということで、以下はネタバレ含む決めつけ。

つまり、この作品そのものが【殺人鬼ハリー・ブロック本人が自伝をベースにして書いた小説】という結論なのですが。
主人公は作中の表現の通り「ゴースト」に過ぎない。処刑された後も、小説家として存在し続ける殺人鬼のゴースト。
そう考えると、作中時間で起こる殺人事件は全てフィクションの可能性が高い。五年で弁護士になったスーパー母さんも存在しない。手紙を送ってくる「ファン」を彼は被害者として登場させた。
では、この小説をしたためた動機は何か。もちろん一つは小説家としての命。そして、もう一つは彼の告発。押しつけられた知らない殺しへの意趣返し。
これ自体が「フィクション」ではないか、という疑念はかなり序盤から持っていて、プロローグだけ「ハリー・ブロック」視点ではないんじゃないかと読み返したりはしてたけど、本編との矛盾は見当たらなかったんだよなー。
ぶっちゃけた話、作中の事件ってたいした意外性なかったですよね。映画の煽り文句が何か妙。
連続殺人については、状況からして犯人は四人の女たちのうちの誰かしかありえないし、こじつけようと思えばどの女も犯人にすることは可能な気が。「この人以外には不可能」ってことはない。
彼については、初登場の瞬間に「あ、この人奥さん殺してるわー」ってばればれだったしな……。
気になっているフックは、たいしてリンクしない作中作、猫の頭蓋骨、あっさり彼を捨てて去っていく女たち、ラストの電車、あと殺人鬼の故郷。ダニエラは同郷、主人公も同じ出身だと告白部分で提示される。まあクイーンズ区なんて広いし、それ以前に住所は提示されてたかも。ニューヨークの地理詳しくなくて読み流してただけで。
正直に言えば、そんなに絶賛されるほどだろうか、という部分があって。デビュー作、かつ翻訳ものだから、ニュアンス的に取りこぼしている可能性も高いんだよなあ。うーん。

もやもやしてます。

同じようなもやもやを感じたことが前にもあって、何かというと「SHERLOCK」です。
共通点は海外ものっていうことで、たぶん海外のフォーラムとかでは、その辺り決着ついてるんじゃないのかと疑ってます。探しにいく根気はない。日本語でもリアルタイム近辺なら突っ込んでいる人いるのかも。
というか、「SHERLOCK」ってわざとそのエピソードに何らかの「疑問点」を残して視聴者が議論する余地を生じさせている手法を取っている気がしてならないのですが、その辺り誰か論じていないだろうか。
誰にでも分かるのは2-3ですけれど。
自分が一番引っかかっているのは2-2「バスカヴィルの犬」です。以下ネタバレ。
何かといえば、「薬はどこに仕込まれていたか」という話。
砂糖は間違いで、森の中の自動噴霧器だった、という話の流れだったけれど、それまでの伏線の流れからして、仕込まれていたのは「タバコ」以外にないと思うのですが、観た方どうでしょう。
依頼人とシャーロックはヘビースモーカーという冒頭においてのコントめいたやり取り。タバコは犯人が提供したもの。ジョンだけ最初の遭遇をしなかった。後に遭遇したので噴霧器もあったのでしょうけど、依頼人に常用させるためにはタバコが一番都合がよい。
話の構成からして結論はそれしかないのに、作中で一切触れられずに終わったし、感想とかで検索かけても触れている人を見つけられない。どうなんでしょう。

うん、もやもやしてます。

2013年6月19日(水)

モノノケ話

そういえば「デンシャ」は別に解説するところないような、大して難しい話でもないのですが、一つだけ「あのモノノケって何?」という声があったので、ちょっと補足すると。
私も知らんです。
というのも、あれも王者舘のお約束登場人物の一つで、「アタシ」を挟んで登場し、「ホントにキミはいるのか?」と執拗に問いかける謎の二人組なのです。
「コンデンス」では「オマエら…一体なんなんだ…」と問われて、「アタクシハ…ヒトノ マバタクマオ スミカトナス」と答えており、役名が「山ン本(サンモト・『稲生物怪録』に出てくるモノノケの親玉)」であることも一応考慮に入れると、まあつまるところ、そういうモノということで。
とはいっても、王者舘の芝居の役名はただの台本の台詞識別のためだけにあるようなもので観る側には分からないけれど。どちらにせよ、大体全員「アタシ」だし。
ちなみに、最初ツクールで作っていた時点では台詞の喋り先の区別が難しかったので、暫定的に名前ついてました。その時の名前は「ヒトカゲ」「オモカゲ」。これは特に王者舘由来じゃないです。

2013年6月23日(日)

Akiary v.0.51