ショウネンオウジャカン

ガラパゴス〜星ノ天狗〜

観劇日 2010.08.20夜 東京ザ・スズナリ

作・演出:天野天街

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 少年王者舘本公演vol.34。

◆好きなシーン

 「ここはあまりよくない」
 反復する神経ケイタイ。
 終わらないダンス。

(2010.8.24記す)

◆困ってる

 難しい。
 すごく難しい。
 毎回毎回言ってるけれど、今回はいつにもまして言葉で何か表わすのがすごく難しい舞台だった。
 でも自分には言葉しかないので、どうにかひねり出せるだけひねり出そうと思います。

(2010.8.24記す)

◆加速するループ

 何でいつもより難しいかというのは大体分かっていて、ループ構造がいつもと違うせい。細かいというか何というか。ループを強化するってこういう方向かー、と予想外。
 つまり、いつもはループするのはシーンだったのに、今回はフェイズになってる。だから確かにループしているのに、どこがどうループしているのか、にわかに掴みにくい。細かいループがあちらこちらで起こり、そのフックは台詞だったりアイテムだったり動きだったり、ぐにゃくにゃ各々が絡まりあって、まるでアフロみたいに広がっていく。
 時間も空間も関係も、混じり合って裏返って遡る。
 戦争。原爆。兵隊。
 それらのモチーフはちらちら顔を出すけれど、「それいゆ」や「自由ノ人形」のように明確な形を持って出てはこない。
 元々不確定な「イチロウ」はそこではいっそう形を失い、矛盾だらけになる。
 というか、たぶん最初っから個人じゃない。個人の体験らしき場面はあるものの、そこに収束はしない。
 遺伝子。ガラパゴス。反復する神経ケイタイ。進化。ニンゲン。さよなら。
 終わらない。だってまだ始まっていないから。生まれていないから。
 ……ほら、難しい。

(2010.8.24記す)

◆そして、ダンス

 たぶん、感想を聞いたら、十人が十人、最後のダンスのことに触れると思う。
 それまで「あ、踊るかな」と思わせつつ、すぐに終わってしまうという肩すかしを何度も食らわせておいて、最後にあれ。
 踊る踊る踊る。終わらないんじゃないかと怖くなるほど続くダンス。圧巻。
 今回のダンスはいつにも増して好きなタイプです。全員が一斉に同じ動きをするより、ずれて違う動きをしているのが好きなので。見ててとても楽しい。
 ただ、この締め方には引っかかるところがなくもないので、それも書く。
 まず、何かごまかされた感。終わらないので踊った的な。つまり、自分にとっては踊りの前までの積み上げがいまいち物足らなかった、ということか。ちなみに前回の「夢+夜」は逆で、今となってはダンスなどの絵としての場面より最後のあの台詞ばかりが心に蘇ってきます。閑話休題。
 そして、さすがに長すぎ感。
 カーテンコール時に、役者さんたちの荒い息遣いばかりが会場を満たすってのはどうだろう。そりゃああれだけ踊ればそうなるのは当然で。ループギャグの時に見える疲れは笑いを誘う気の抜けた効果だけど、ダンスの後にそうだと「お疲れ様」という気持ちが心を占めてしまって、興が冷めるというか。そこで気を抜いてもなあ。
 加えて、見る側の集中力の問題。これだけの間維持するのはさすがに困難。かといって、ぼんやりと見るにはそぐわない空気なので、どうにも半端な緊張状態で対峙することになる。維新派だと半分寝ているような状態で見ている場面が途中にあって、それはそういうもんなんだと思えるけど、王者舘のダンスはそれとは異なるものだからなあ、と。
 どうも「心地よい疲れ」を通り過ぎてしまうんじゃないかな、と素人ながら思った訳です。これがダンス公演なら……と考えたけど、むしろダンス公演の時の方が緩い踊りが多かった。

(2010.8.24記す)

◆題名

 今そういえば、席についてパンフを見たら、副題に〜星ノ天狗〜とついていたので、「あ。書けなかったの……か?」との危惧が心の中を駆け抜けていったのですが、結局「星ノ天狗」っぽさは全然感じなかったような。まあ、「星ノ天狗」は戯曲集で読んだだけなので、何かしら通じるところがあったのかな。
 ガラパゴス。
 隔絶された空間。
 遺伝子の特異変化。伝授。保存。
 「ここはあまりよくない」
 イメージ的なモチーフなのだろうけど、今回は題名も難しい。
 とりあえずここで終わりきれずに終わる。
 始まっていなかったのかもしれない。

(2010.8.24記す)