フリーゲームのご紹介
2015.11.03
久しぶりにあらゆる面で隙がないなという作品に出会ったので、ご紹介。
ジャンルは「サイコアドベンチャー」ということですが、形としては基本的なドット謎解きADVです。
グラフィックも音楽もシステムも謎解きも非常に高いレベルでまとまってます。
特に謎解きのバランス設定がかなり秀逸で、まあ仕組み自体は見たことあるパターンが多いのですが、一ひねりしてあるところもあって、あんまり「またこれか」感はない。何より雰囲気を壊さないよう気を遣ってるなあと感じさせます。
シャンソン調の音楽いいよね。
この祝日にいかがでしょうか。損はしないと思うよ。(以下ネタバレ的な部分を含むのでプレイ後にお読みください)
ただ、一点だけ気になるところがあるといえば。
お行儀良くまとまりすぎちゃってるのが惜しいかなとも思う。いや、これは本当にレベル高いから逆に感じてしまうことなのですが。
いわゆる「ダークファンタジー」の枠・文法に綺麗に収まりすぎちゃってるかな、と(メタ部分も含めて)。
何か一個だけ歪に突き抜けていると、もっと鮮烈だったかもしれない。
例に出すとIbはギャリーが普通の男性だったり少年だったりしたら、多分あそこまで人気は出てなかっただろうし。「The PATH」は徹底的に説明しないことでプレイヤーを突き放してるし。映画「パンズ・ラビリンス」はスペイン内戦っていう本気でえぐい背景・現実パートがあるからこそ、幻想世界のグロさが担保されて対比になってる。
「組織」がその歪んだ部分になるのかなと期待してたけど、どうもフレーバーのまま終わってしまった。メタもね。人のことは言えた義理ではないけどね。楽しいよねメタ。擦れてるからその辺りの仕掛けで特に動揺しなかったのも良くないね。擦れるって悲しいね。
ともあれ、好きなシーンは覗くお母さんです。
あそこ本当うまい。うざい。
ああいうのって、うっかり過剰な台詞で説明させてしまうケースが多いのですが、きっちり絵で見せてきて素晴らしかった。
精神世界のビジュアル面より、ああいう現実寄りのサイコな怖さがもっと見たいかもしれない。
これだけのものだから多分一気に話題になるんじゃないかなーと思うけど。
次の作品も見られたらいいなと思います。
面白かった。
ダンス・マカブルおまけ話
2015.10.12
そんなこんなで、ダンマカを公開してから一年が経ちました。
特に何かがある訳ではないのですが、せっかくですから元ネタ話でもしようかなあと。
とはいえ、大体皆さん分かってらっしゃいますし、物語の具体的な年月や舞台の場所、あるアイテムのことなど、一部は小説で補完していただいたり、その後書きで触れてしまったので、それ以外の分かりにくいやつにしましょう。
ということで、検索しても日本語で書かれたページはないわ、英語で検索しても小説の書名の方が大量に引っかかってしまうわ、更に最近出た洋ゲーでどうも敵として登場したらしく、更に検索の深層へといってしまった「the plague maiden」さんのお話です。
これ、資料の中でも「ウィーンペスト年代記」に一節書かれただけで他のものには見当たらず、ひょっとして作者の創作かもしれないので裏を取りたかったのですが、英語でどう称されるかも不明だったので、それっぽい訳語で当たりをつけてどうにかドイツ語のページを発見した後、ようやく英語で触れられているサイトにたどり着きました。
「疫病の乙女」は以下のような伝承です。
Many commoners believed in a legendary witch called the plague maiden. She was very beautiful and carried around a red scarf. It was said that she travelled from village to village, passing by each house waving her red scarf in front of a house’s window or door. This house would become plague-infested. A legend told that a brave young man waited all night for the witch to arrive, and when she did he cut her hand off with a sword. It was said that he was the last to die of the plague in his village.
非常に簡単な英文なので特に訳は必要ないかなと思うのですが、いちいち読むのも面倒だと思うので一応訳しておきますと。
「疫病の乙女」と呼ばれる伝説の魔女のことは、多くの人が信じていた。赤いスカーフをいつも持ち歩く美しい乙女である。彼女は村から村へと旅をし、その赤いスカーフで通りすがりの家の戸や窓を撫でていくという。すると、その家に疫病が発生するのだ。
勇敢な若い男が夜を通して彼女の到着を待ち、その手を剣で切り落としたという伝説がある。その村では彼が疫病で死んだ最後の人間となったという。
多分ドイツとその周辺で語られている伝説なんじゃないかと思うのですが、スカンジナビアでも信じられていたみたいだから、結構範囲広いのかな。
There were also those who believed in demonic dogs, and in Scandinavia, the superstition of the Pest Maiden was popular.
The Black Death – What You Need to Know about the 14th-Century Plague
これさっき見つけたのですが、なんともまた悪魔の犬と乙女という組み合わせ。
繋がる時はこうやって運命のように繋がっていきます。
ダンマカでは色々と勉強させてもらいました。
不勉強な身なので、新たな発見がたくさんあって楽しかったです。
逆十字はアンチキリストじゃなくて、むしろ謙虚を示す信仰のシンボルとか知らなかったわ……。
あと訳が分からなかった当時のフランスのぐだぐだ具合の一端をようやく掴んだりとか。
小説の監修の際に調べた辺りは、もちろんゲームには間に合わなかったのですが、入れても面白かったかなあとか。でも無駄に複雑にするだけだからやっぱ今ぐらいがベストか。
つい最近知った「ミシシッピバブル」とかどんぴしゃだったのか……とか。でもこんなの取り入れられる訳ないな。カオスの極みだ。
いやあ、面白いですね、歴史ってやつは。
無事帰国
2015.09.27
先日からちょっとイギリスぶらぶらしてましたが、無事帰国しました。
今回は田舎辺りをうろついていたし、カメラもちゃんとしたの持っていかなかったので、スマホ撮りのみですが、いくらか撮ってきたものを写真素材のページにぶち込んでおきました。
こんな感じの。
チェスター大聖堂は内陣にも自由に入ることができたので、聖歌隊席とか間近に観察できました。ダンマカの前に見られたら、もうちょっとイメージ掴みやすかったな。とはいえ、いつ何を題材に造るかは分からないのでしょうがないけど。前にもどこかで見たことはあっただろうし。
あと向かいのTown hallが誰もいない上にすごい穴場だった。地元の人は別に面白くもないんだろうなあ。
他には湖水地方で羊を数えて暮らしてました。あいつらすごいこっち見る奴がいる。
それとハイドパークでリスを追いかけて、登っていった木にインコ(結構ロンドンで野生化してる)がいたのでぼんやり眺めていたら、栗のイガをリスに落とされてもろ命中するという、二度と人生で起こらないだろう体験をしました。猿蟹合戦か。
そんな感じです。
実況のこと(後編)
2015.09.08
さて後編。
製作者として「あまり良くないなあ」と思っていること。
でもどうしようもないこと。
それは「実況によって一気にもてはやされすぎる」という現象です。特に初めての作品なら尚更。
うっかり有名実況者に取り上げられようものなら、一気に注目される訳です。
それの何が悪いんだよ、と思う人もいるだろうし、それを目指してるんだ、という人もきっと少なくないんだろうと思います。
その時はいいんです。
たくさんの人が自分のゲームについて語ってくれたりして、DL数も伸びて、作って良かったって嬉しい気持ちでいっぱいでしょう。
そこで「あー幸せだった。もう作らなくていいや」となったり、特に大ヒット作品だとプレッシャーや色々なトラブルで作れなくなってしまい、それだけで終わってしまうというパターンが多いってのも残念ではあります。
でもそれ以上に心配なのが、きちんと次の作品を作り上げられた場合のこと。
それが同じように実況者に取り扱ってもらえるとは限らない、という部分です。
前編で書いた通りバブルは弾けてますし、供給は溢れんばかり。実況界隈の時流の問題もあって、もはや確実ではないんですよね。次は実況受けしないジャンルに挑戦したりすることもある。
そうなると、いきなりDL数は落ちる。思ったような反応はない。もちろん前回のことでファンは獲得してるでしょうが、それにしてもあまりの落差です。
「あれは自分の力じゃなかったんだ」と気づいた時、モチベーションは多分がっつり落ちます。
それを取り戻すのは結構難しいです。
元々、創作活動において、高すぎる自己評価と悲惨な結果からくる落胆って、初期に必ず経験するといっていいものなんですよね。
だから別のところでそれを経験済みの人は、また頑張れるかもしれない。
でもこれが初めてだったら? 華やかな結果を最初に味わってしまったら? 無理かもしれない。
もちろん実況出現前でも、メディアなんかによっていきなり分不相応に持ち上げられてちやほやされるってことはいくらでもありました。
でもそれは「自分のゲームが評価されている」という点では間違いなかったんですよ。
だから次は思ったようにいかなくても、最初の華やかな結果が否定されることはない。そこが大きな違いです。
「実況」というものがある世界は大きなチャンスでもあるけれど、厳しくもあるなと感じます。
足下に土を詰んで塗り固めて、一歩一歩進める階段を作っていくのが理想的なのに、一気に高いところまで持ち上げられて降りる手段がない感覚。
見ていてはらはらします。
自分についていえば、実況が出現した時には既に「マヨヒガ」「オシチヤ」は十分な評価をいただいていましたし、実況向けじゃない「かもかて」がありがたくも多大なご支持をいただいていたという背景があったので、あまり心乱されずには済んでます。やっぱり「かもかて」みたいなのを抱えているっていうのは精神安定にはでかいですよ。実況のプラス面の恩恵を素直に受け入れられます。
でも実況向けじゃないジャンルをメインにしている人とかは複雑だし面白くないだろうなあ、とも。
正直、解決策は見当たらないです。もう少しフラットに出来ればいいのにね。
そんなこんなで、どうしようもない話でした。
たくさんの製作者さんが増えて、そして二作目、三作目と重ねて作っていってほしいのです。
それがフリーゲーム界にとって何よりのことなんですから。
実況のこと(前編)
2015.09.07
前から書こうかどうしようか考えてたのですが、またぞろ界隈がざわざわしているみたいなので、やっぱり一度書いておこうと思います、表題のこと。
とはいっても、うちのゲームの個々の話ではなく、お金や権利とかの話でもなく、製作者として気にかかっていること。
まず大前提として、「ゲーム実況」という行為に対しては自分はかなり好意的な評価です。
なぜかというと「ゲームを広報する」という方法において、実況は最も理想的といっていい手段だからです。だって「実際のゲーム画面」で「実際に遊んでいる様子」が見られるんですから。
マリオカートやスプラトゥーン、モンハンなどのタイプの作品において、実況ってマイナスになる要素ほとんどないんですよね。むしろどんどんメーカーはやってくれって思ってる。
(カプコンがモンハンのプラットフォームを3DSに移したのは成功だったんだろうけど、正規の手段で実況がほぼ不可能という点だけは大失敗と思ってるだろうなあ)
しかし「実況」という形態を評価するとはいえ、実況界隈を手放しで肯定するかといえば、それは勿論NOでもあります。
色んな歪みが臨界点に達しつつあるからね。
ちょっと話を戻して、私が「ゲーム実況」というものを初めて明確に意識したのは、ふと覗いたランキングで目にとまった動画でした。ランキングに朝方現れて「すごい面白い」と思ったその動画は、案の定夕方にはトップにまで上り詰めてました。
それが何かというとhacchiさんの「The Immortal」の実況です。
という訳で、おおむねニコニコのゲーム実況の黎明期から大体流れは追ってきてます。さすがにピアキャスとかの配信期は知りません。
フリーゲームについても、まあ大体は。
ゆめにっき実況で下地を作っていたボルゾイ企画が青鬼で一挙にランキングを塗り替えてから始まるあのフリーゲームバブルは、あれよあれよという間でしたね。あの頃は全ての動画に「絶叫」がついていてうんざりしたものです。まあいつの世もそんなもんです。
同時に別の世界がクロスする時に揉め事は当然起こるもので、シルフェイドやらタオルケットやら炎上も色々ありましたなー。
ちなみにフリーゲームバブルは2012年末のマッドファーザー辺りで弾けてますから、その頃までの感覚で変に今挑戦しない方がいいですね。
ともかくも、こっそりと2chあたりで溜まっていたフリゲ界は、時代の流れで引っ張り出されてしまった訳です。
それはどうしようもないことですし、良い面悪い面両方持ってます。
変化に逆らっても意味はないので、どうにか居心地の良い場所を作っていくしかないんですけどね。
さて、そんな中、懸念している本題ですが、長くなったので明日の後編に続きます。
製作者視点の話です。
実況者に文句があるとかいう話でもなく、どうしようもないことについてです。